ひろしせんせーのひとりごと。

44歳の脱サラ保育士ひろしせんせーが書いています。

保育園における地域の子育て支援

保育園は入園した子どもを保育するだけのものではありません。保育園を利用せずに家庭で子育てをしている親子への子育て支援(ここでは「地域子育て支援」と言います。)も大切な仕事です。

 

地域には児童館や子育て支援センターなど、子育て中の親子向けの施設があります。なぜ保育園でも同じようなことをしなければならないのでしょうか。

 

ここ数年、児童虐待による残念なニュースは後を絶ちません。児童相談所児童虐待対応件数も2020年度は20万件近くに上ります(193,780件)。児童相談所は親子を分離しなければならないほどの虐待ケースを主に対応すべきなんですが、そんなケースが全国に20万件も発生しているというわけではありません。20万件のうち56%が「心理的虐待」という種別で、保護者が子どもを怒鳴ったり子どもの前で夫婦喧嘩をすることがこれに含まれます。心理的虐待のすべてが一時保護が必要ないというわけではありませんが、身体的虐待や性的虐待に比べれば危険性が少ないのは明らかです。仮にこの心理的虐待を減らすことができれば、児童相談所はもっと危険性の高いケースに集中することができ、子どもが命を落とすようなニュースは少なくなるのではないでしょうか。そのためにできる子育て支援のコンテンツは、多ければ多い方が良いのではないでしょうか。

 

また、「心理的虐待」はなぜ起きるのでしょうか。理由は一つではありませんが、虐待者である親の「イライラ」が原因の大部分ではないでしょうか。ではさらに、なぜイライラするのでしょうか。

人が対人コミュニケーションにおいて怒りを感じるのは、相手に自分の「こうあるべき」を求めるからです。道路で肩がぶつかったとき、「一言謝るべき」と考えているために、謝られなかったときに怒りを感じます。妻が帰りが遅くなった時、「きっと夫は夕飯を作ってくれている」と考えるために、作ってくれていなかったときにイラっとするのです。

子育てでも同じことが言えます。子育ては必ずと言っていいほど思わぬ事態が起こるものです。子育ては(あるいは子どもは)「こうあるべき」との考えが強いほど、不測の事態が起きたときにイライラを感じます。本来子どもの発達によって立ったり歩いたりする時期は違うのですが、早く立ってほしい歩いてほしいと考えるために、不安に感じたり苛立ちを感じたりします。手伝ってくれてもいいのに疲れているからと言って手伝ってくれないパパを見てイライラするのも同じです。パパにイライラすれば、やがて夫婦喧嘩となり、子どもの前で夫婦喧嘩をすれば心理的虐待になります。

そんな「こうあるべき」を解きほぐしていくにはどうしたらいいでしょうか。それは誰かに話すことでしかないと私は考えます。自身の考えを誰かに聞いてもらい、もう少し柔らかく考えてもいいんじゃないかと、適切な時期に適切な言葉で聞くことによって、少しづつ子育てをしやすくなっていくものだと思います。

 

保育園が子育て支援をする理由はまだまだあります。

保育園には保育士と言う子どもの専門家がたくさんいます。それだけではなく、看護師や栄養士、進んだ保育園では社会資源や制度の専門家であるソーシャルワーカーもいます。様々な専門職がそろった保育園と言う組織を、地域の子育て支援に活用しないのはもったいないではないでしょうか。全国に2万3千か所(2020年)ある保育所認定こども園を含めると約3万か所)が、少しずつ専門性を出し合うことが、大きな支援に繋がると思います。

 

そんなわけで私は保育園で地域の子育て支援を担当しています。

保育園の保育士は基本的には目の前の子どものことで精一杯です。だからこそ私は地域の子育て支援を好きなようにやらせていただいています。これももちろん、保育ソーシャルワーカーの仕事の一つです。